2016年02月14日

ヒドナンギウムの季節

昨日、京都市で開催された関西菌類談話会の総会・講演会でお会いした大阪のKさんから、とても新鮮なヒドナンギウム属菌を頂いてきた。

昨年も頂いたのは3月だったので、やっぱりこのヒドナンギウムの発生時期はこんな早春の頃のようだ。
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※この写真は、ピントをずらして撮影した6枚の写真を Photoshop cc で合成したもの。比較的うまくできたな・・。

断面はクルミタケなんかともちょっと似た感じだが、キツネタケの仲間の色合いや質感を強く残している。
地下生化してからまだ日が浅いのではないだろうか(と言っても何万年という単位の話なのだろうが・・)?
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※訳あって中心を外して断面を切っているので柄の名残が見えないのが残念だ。

昨年確認できなかった担子器や菌糸のクランプなどを確認するため切片を切り出してみた。
しかし、びっしりと胞子が付着していて子実層の様子は良く分からない。実質の菌糸もはっきりしない。
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胞子の少ない場所を探してみても担子器の姿ははっきりしない。
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コンゴーレッドで染色して押しつぶしてみると、やっと担子器の姿がとらえられた。二胞子性に間違いない。
しかし、胞子を成熟させた担子器は内容物が抜け出して皮(膜)だけぺしゃんこになっているように見える。
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これは、地下生化し胞子を発射する必要がなくなったため担子器内の養分を他に回しているためだと考えられるが、完全に溶けないで皮だけ残っている担子器の様子は、やっぱり地下生化してまだ日が浅いことを感じさせる。

ぺしゃんこの担子器はこちらの画像の方が分かりやすい。
まるでゲゲゲの鬼太郎に出てくる「一反木綿」のよう・・
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いくつか切片を作ってみたが、意外に菌糸の確認が出来なかった。
ところどころにこのような細長い菌糸が見られるのだが、隔壁は少なくクランプも確認できなかった。
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菌糸のクランプについてはもう少し観察をしないといけないようだ。

これは、コンゴーレッドで染色した胞子だが、相変わらず美しい姿をしていた。
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posted by gajin at 22:34| Comment(0) | きのこ

2016年01月02日

ホンシメジ・その2

ホンシメジの栽培品は近くの農業公園内にある産直市場でいつでも売られているのだが、1袋が500円もするのでお盆とお正月くらいしか庶民には手が出せない・・。

タカラバイオ(株)が大量生産技術を確立したこの「大黒本しめじ」は、当初、四日市市楠町で生産されていたのだが、現在は京丹波町にある瑞穂農林株式会社(タカラバイオ・京丹波町・京丹波森林組合が共同出資)のみで生産されているようだ。
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シイタケやブナシメジなら200円くらいで売られている量だが、どうしても栽培にコストがかかってしまうのだろう。この値段では地方のスーパーでは到底他のきのこに太刀打ちできないため、このような産直市で高級なイメージで売られているのだろう。しかし、いかにも丹波の山で育てましたというようなこのパッケージはちょっと残念な気がする・・。

パッと見は天然のホンシメジとかなり違うなという印象を持っていたのだが、こうやって各部をじっくり眺めてみると、やっぱりこれはホンシメジに違いないということが理解できる。
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昔、滋賀県の林業試験場で試験栽培されているホンシメジを見せてもらったことがあるが、それはかなり天然のものに近かったと記憶している。菌株の違いなのだろうか?

天然のホンシメジといちばん違うと思うのは柄の緻密さが少ないことだろう。手に持った感じもふわふわとしているし、食感も天然のものとはかなり違うように思える。これはエサの違いからそうなってしまうのだろうか?
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最初は見た目の違いから、これらの菌株は外国産のホンシメジの仲間から採集したものかと思っていたが、タカラバイオが特許を持っている「ホンシメジの人工栽培方法」の説明を見てみると、主な菌株は秋田県や福島県など国内で採集されたもののようだ。

一番確認してみたかったのは、この胞子がどんな形をしているかである。
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これなら「球形」といえるだろう。
サイズは、径5.5〜7.5μmとかなりばらつきが大きく平均で6.4μm。図鑑の記述「4〜6μm」に比べると3割弱大きいようだ。

この栽培品がどこで採集された菌株なのかは分からないが、胞子が球形でなかった近所の松山のホンシメジよりも図鑑に記載されたものに近いもののようだ。これはかなり意外だった・・。



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2015年12月24日

とても暖かいクリスマスイブの日

12月とは思えない暖かい陽気に誘われて、やや久しぶりの香良洲海岸に行ってみた。

海浜の一角ではヒメカンムリツチグリ(Geastrum quadrifidum)の新しい子実体が幾つか見つかった。
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発生場所は、もう10年くらい前からヒメカンムリツチグリが発生を続けている場所だ。
2-3年で発生しなくなるケシボウズタケの仲間と違って長期間発生を続けられるのは、地表近くの有機物をエサにしているからなのだろうか?
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ナガエノホコリタケも2-3か所で発生していた。
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どれも1-2か月前に発生したものだと思うが、今年は比較的多くの場所でケシボウズが発生しているようだ。
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ツノマタタケは、意外にも海岸でよく目にするきのこだ。
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香良洲公園の一角ではショウロがたくさん発生してきていた。
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ごく最近発生してきたようで、まだ食べられそうな程に若いものが多かった。
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この場所は土が比較的硬いので地表に露出して発生しているが、もっと柔らかい砂地の場所では目に見えない地下でこのような発生が始まっているのかも知れない・・。

庭のエノキタケも昨夜の雨で元気を取り戻していた。
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枯れたムクゲの根元には若い幼菌も顔を覗かせている。
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この冬は本当に暖かくて、いつもなら2-3月頃に咲き出すはずのツバキがもうかなり咲いてきている。
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バラのような大輪のツバキを庭の片隅で発見!
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あまりに大輪のせいで下を向いてしまっていたので、手で支えて写真を撮っている。

この暖かさでハチやアブも活発に活動していたので「虫の目レンズ」で遊んでみた。
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影を作らないように虫に近づくのはなかなか難しい・・。


posted by gajin at 18:08| Comment(0) | きのこ

2015年12月06日

ホンシメジの季節

近くの松山を今年最後の確認のつもりで歩いてみたら、ホンシメジの発生を10年ぶりくらいに確認することができた。
ホンシメジは県内でも発生がほとんど確認できなくなってきており、2014年に改定した三重県レッドリストでは最高ランクのCR(絶滅危惧TA類)にランクをアップしたところである。

今年は10月の乾燥と11月の高温多雨のせいで発生時期がやや遅れていたのだろう。この時期になってもまだ傘は完全に開いていない。
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しかし、ホンシメジ自体はかなり晩生のきのこで、12月に発生することはそれほど珍しいことではない。

反対側から見た発生状況
尾根筋の道の脇に3株ほど発生していた。
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ホンシメジがたくさん発生した頃には、足の踏み場がないほど幼菌が辺り一面に発生したものだ。ホンシメジに関しては「シメジ」の語源は「占地」で間違いないだろう。

発生場所の植生は、貧弱なアカマツとコナラが道の左右にとりあえず1本ずつ生えているという程度で、あとはヒサカキ、ネジキ、ソヨゴ、ツツジやササの仲間といったところ。
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ホンシメジはマツタケと違ってアカマツの純林には発生しない。アカマツ+ヒサカキ・ネジキ・コナラなどが混生した林でないと生育できないようなのだ。
ヒサカキ(モッコク科)やネジキ(ツツジ科)は外生菌根を作る植物ではないが、何かしらホンシメジの菌根と関係しているように思われる。

傘表面はウラベニホテイシメジやクサウラベニタケなどとよく似た感じで、ハタケシメジとはかなり違っている。
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この写真は50mmマクロレンズでピントをずらして撮影した2枚の画像を深度合成している。(次の写真も同じ)

若い方の株では柄の根元が膨らんでいるのが分かる。
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採集してきたきのこの標本写真
傘の径は6-8cmほどで比較的大型である。貧弱なシロの割りには1株当たりの発生本数が少ないためであろう。
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柄は類白色。成長に伴い根元の膨らみは目立たなくなるようだ。
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肉質は緻密で、柄は繊維状に縦に裂けやすくなっている。
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こちらは若い方の株
柄の根元は大きく膨らんでいる。
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これらの標本写真もピントをずらして撮影した3-5枚くらいの画像を深度合成している。
1枚の写真で全体にピントを合わせることは、レンズの絞りを最大に絞り込んでもなかなか難しいからだ。

これらの貴重な採集品は、DNAサンプルの採取や顕微鏡観察を行ったのち、乾燥標本として保存した。
ごく一部を食味検査に回したが・・。(^^;

胞子は類球形で、6.5×5.5μm程度。
新菌類図鑑の記載では「球形」となっているが、どう見てもこれは球形とは言いがたい・・。
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ホンシメジは2種以上を含む複合種であることが確認されているので、本種は図鑑に記載された種とは別種なのかもわからない。

そして胞子は非アミロイド
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ひだ断面は予想どおりのつまらない姿
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そして、例によってフロキシンで染色してKOHでふやかして押しつぶした子実層の様子
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ひだ実質の菌糸には特大のクランプが見られる。
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傘表皮も、見た目の割りにつまらない様子だ。
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コンゴーレッドで染色して、KOHでふやかし、さらに偏斜照明まで当ててみた。
傘表面は細い菌糸が平行に走っている。
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小さなつぶつぶは付着した胞子。黒っぽいものは何かの微生物(菌類?)が付着(寄生?)したもののようだ。

posted by gajin at 23:15| Comment(0) | きのこ

2015年11月30日

検鏡の結果

遠州灘の海岸で採集してきたケシボウズとヒメツチグリ属の標本を検鏡してみたので、その結果を掲載しておく。

検鏡といっても胞子のみの観察である。
ケシボウズの胞子はけっこう小さいので、対物レンズはすべて100倍の油浸レンズを使用した。
また、標本写真は、ピントをずらして撮影した2-4枚程度の画像をPhotoshopで深度合成している。

先ずは、浜岡砂丘で採集した小型のケシボウズ
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胞子は小さいイボに覆われていると予想していたが、意外にもアバタケシボウズタケのように大型のトゲに覆われているものが多かった。
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次は、浜岡砂丘で採集したナガエノホコリタケらしきケシボウズ
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胞子表面はトゲ状〜マスクメロンのような網目状になっており、ナガエノホコリタケとして間違いないようだ。
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浜岡砂丘で採集したヒメツチグリ属でヒメカンムリツチグリのようだと思っていたものも、孔縁盤の形状などを確認すると、これもヒヨリヒメツチグリのようだ。
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胞子は褐色で、不定形なイボ状突起に覆われている。
サイズは径4.2μm程度の球形で、ヒヨリヒメツチグリの新産種報告(坂本・糟谷 2008年 日菌報)の記載(5.5-7μm)よりもかなり小さいようだ。
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次は典型的なアバタケシボウズタケと思われた中田島砂丘のケシボウズ
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胞子は角錐状のやや長いトゲに覆われているが、比較的小さいトゲに覆われている胞子も混じっているように見える。
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これは中田島砂丘で採集した小型のケシボウズを2つ並べている。
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上側のものの胞子は、浜岡砂丘のものと同じようにアバタケシボウズタケの胞子とよく似た姿をしている。
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下側のものはアバタケシボウズタケを小型にしたような姿をしているが、胞子は意外にも小型のトゲに覆われていた。
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中田島砂丘で最後に採集した大型のアバタケシボウズタケらしきもの
頭部がかなり扁平なのが気になった種だ。
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胞子を確認すると典型的なアバタケシボウズタケの姿をしていた。
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中田島砂丘で採集してきたヒヨリヒメツチグリらしきものも念のため確認してみた。
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こちらの方は胞子サイズが径5.0μm程度あり、浜岡砂丘のものよりやや大きいが、やはり前述の記載よりは少し小さいようだ。
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posted by gajin at 23:24| Comment(0) | きのこ