2016年07月17日

黒変するピンクのルスラ

7月16日(土)三重県民の森で開催されたきのこ観察会で発生が再確認された興味深いベニタケ属菌のメモ

この場所で最初に見つかったのは2008年7月5日で、こちらに観察記録を書いている。
恐らく未記載種であると思われるが、本郷次雄博士が1987年8月4日と1993年8月6日に大津市で採集された子実体の記録を残されている。また、2006年7月に開催された仙台合宿でも私自身が29日に太白山で採集しており、関西のみならず広範囲に分布しているのではないかと思われる。

10:46 見つかった直後はこのような状態だった。近隣の菌根性樹種はアラカシとモミ。
この時点で中央のきのこに潜んでいるナメクジを退治しておくべきだった・・。
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15:07 観察会終了後に行ってみると約4時間の間に傘が1個まるごと食べられてしまっていた。160716_150654_EM521671xs.jpg

柄が全体に特徴的なピンク色を帯び、傘表面はややビロード状で赤紫色の地に周辺部が黄緑色を帯びる。
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全ての部位がシロクロハツのような黒変性を持っている。
胞子紋は白色。ひだは柄に近い部分から分岐しているものが多い。
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ひだ断面を見ると、細長い縁及び側シスチジアが数多く見られる。
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ひだ断面を偏光照明で観察すると、なぜかシスチジアのみが光り輝いて見える。
これがこの種のみの特徴なのか、他の種にも広く見られる現象なのかは良く分からない。いちど色々な種で確認してみないといけないと思っている。
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側シスチジアは指状突起を持った細長い円筒状〜棍棒状。縁シスチジアもよく似た形状である。
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傘表皮は隔壁を持った毛のような菌糸が多数立ち上がっているようだ。
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乾燥系60倍対物レンズで観察した担子胞子(メルツアー試薬で染色)
細かいイボ状突起に覆われている。
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こちらの画像は油浸100倍対物レンズを使用し深度合成を行ったもの
胞子のサイズは8×6μm程度
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こちらは深度合成をしていない画像だが、くっきりした胞子盤の模様や比較的長い嘴状突起の様子が確認できる。
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posted by gajin at 23:11| Comment(2) | きのこ

2016年07月15日

とても忙しい日々

なんと1か月以上も更新をサボってしまった。
きのこが無かったからじゃなくて、あり過ぎて忙しかったから・・。
それになんか最近はTwitterの方でリアルタイムに情報発信するのにハマってしまって、ブログの方がおろそかになってしまっていたのだ。

この1か月間に目にしたきのこを幾つか掲載しておく。

これは昨日初めて目にすることができたフカミドリヤマタケまたはヒスイガサ(いずれも仮称)とされるきのこ
7月4日に探したときにはまだ何も見つからなかったのだが、昨日は幼菌から老菌まで揃っていた。
これはまだ若い子実体で、遠目には黒っぽく見えていた。
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(7月14日 三重県菰野町)

こちらは、すらっと柄が伸びた子実体
柄の色など芝生の緑とそっくりで見つけにくい。
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(7月14日 三重県菰野町)

きのこ仲間の裏庭のミョウガの中に生えたセミタケ
4本生えたという。
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(7月14日 三重県いなべ市大安町)

これまた、きのこ仲間の家のすぐ近くに発生したキヌガサタケ
早朝連絡をもらって駆けつけたら丁度良い具合に開いたところを見ることができた。
今年は6月中旬に数本発生したようで、もう出ないかと思っていたのだが、雨が多く降ったため遅れていたものが発生したのだろう。
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(7月14日 三重県いなべ市藤原町)

近所の神社のティラミステングタケ(仮称)
前日に発生したらしく、乾燥で傘がひび割れ、とても脆いひだは無くなっている。
マクツバコナカブリテングタケという仮称があるようだが、ティラミステングタケの方が広まりつつあるようだ。何より、ココアの粉をまぶしたような傘が、お菓子のティラミスそっくりだからだ。
本種は、シンガポールで採集された標本により記載された Amanita vestita と同種だと思われる。
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(7月12日 三重県松阪市)

7月9-10日は兵庫きのこグループの合宿に参加させていただいた。

探索地となった兵庫県但馬高原は標高500m〜600mほどで、イグチの仲間の発生は少なかったが、ベニタケやテングタケを中心に多くのきのこを見ることができた。
中でも一番きれいだったのがこのヒメベニテングタケ
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日和田高原などで見たものよりも赤味が強いように思われた。
(兵庫県美方郡香美町)

真正コテングタケモドキのつぼは、このようなくびれがあるらしい。
でも、これが真正のコテングタケモドキであるかどうかは?らしい・・。
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(兵庫県美方郡香美町)

7月1日〜4日はきのこ写真家の大作さんがこちらに来られていた。
和歌山に光るきのこやキヌガサタケを撮影に来られた帰りだったが、関東方面では見られないきのこを精力的に撮影されていた。
写真はミミブサタケを撮影されている大作さん。
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(7月3日 三重県松阪市)

アオゾメクロツブタケがマテバシイのほぼ純林と思われる場所に発生していた。
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(7月4日 三重県菰野町)

津市の公園ではタマアセタケがちょうど発生のピークだった。
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(7月4日 三重県津市)

ミミブサタケは三重県内では比較的珍しく、これが2例目となるようだ。
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(7月3日 三重県松阪市)

堀上げたところ
菌核は掘るときに少し欠けてしまったようだ。
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(7月3日 三重県松阪市)

チャタマゴタケを求めて伊勢神宮に行ってみたが見つからなかった。
代わりにハナビラタケが立派に発生していた。
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(7月2日 三重県伊勢市)

シロオニタケもきれいに発生しているところが見られた。
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(7月2日 三重県伊勢市)

6月25-26日は大阪市立自然史博物館で開催された菌類講座(旧腹菌類の分類と観察法)に参加させていただいた。
腹菌類とは関係ないが、会場隣の植物園の竹林で珍しいカヤバノクヌギタケが見つかった。通常はススキの根元に発生するらしく、竹林で見つかったのはこれが初めてということだ。
しかしこれ、とてもクヌギタケ属とは思えない姿をしている。
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(6月26日 大阪市東住吉区)

もちろん、腹菌類も珍しいものが採集された。
見つかったら良いなと期待されていたシロクモノコタケだ。主に関西方面の海岸などで見つかっている菌だが、内陸の芝生上でも採集例があるようだ。
やはり、これも植物園の芝生上で発生が確認された。
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(6月26日 大阪市東住吉区)

6月24日、津市の公園に行ってみると、以前から「うまそうなイグチ」と呼んでいるイグチの仲間がたくさん発生していた。
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(6月24日 三重県津市)

ムラサキヤマドリタケも少数だが発生していた。
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(6月24日 三重県津市)

アイタケもなかなかきれいな姿で発生していた。
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(6月24日 三重県津市)

最近の写真は、生態写真でも深度合成(ピントをずらして撮影した画像を合成して深いピントの写真を作成すること)を多用しているので、ピントがきりっとした写真が多くなったと思うのだがいかがだろうか?
まあ、必然的に三脚を使うことになるので、手振れが無くなることの効用の方が大きいのかも分からないが・・。

その他にも掲載したいきのこはたくさんあるのだが、これくらいにしておこう・・。


posted by gajin at 23:53| Comment(6) | きのこ