ホンシメジは県内でも発生がほとんど確認できなくなってきており、2014年に改定した三重県レッドリストでは最高ランクのCR(絶滅危惧TA類)にランクをアップしたところである。
今年は10月の乾燥と11月の高温多雨のせいで発生時期がやや遅れていたのだろう。この時期になってもまだ傘は完全に開いていない。

しかし、ホンシメジ自体はかなり晩生のきのこで、12月に発生することはそれほど珍しいことではない。
反対側から見た発生状況
尾根筋の道の脇に3株ほど発生していた。

ホンシメジがたくさん発生した頃には、足の踏み場がないほど幼菌が辺り一面に発生したものだ。ホンシメジに関しては「シメジ」の語源は「占地」で間違いないだろう。
発生場所の植生は、貧弱なアカマツとコナラが道の左右にとりあえず1本ずつ生えているという程度で、あとはヒサカキ、ネジキ、ソヨゴ、ツツジやササの仲間といったところ。

ホンシメジはマツタケと違ってアカマツの純林には発生しない。アカマツ+ヒサカキ・ネジキ・コナラなどが混生した林でないと生育できないようなのだ。
ヒサカキ(モッコク科)やネジキ(ツツジ科)は外生菌根を作る植物ではないが、何かしらホンシメジの菌根と関係しているように思われる。
傘表面はウラベニホテイシメジやクサウラベニタケなどとよく似た感じで、ハタケシメジとはかなり違っている。

この写真は50mmマクロレンズでピントをずらして撮影した2枚の画像を深度合成している。(次の写真も同じ)
若い方の株では柄の根元が膨らんでいるのが分かる。

採集してきたきのこの標本写真
傘の径は6-8cmほどで比較的大型である。貧弱なシロの割りには1株当たりの発生本数が少ないためであろう。

柄は類白色。成長に伴い根元の膨らみは目立たなくなるようだ。

肉質は緻密で、柄は繊維状に縦に裂けやすくなっている。

こちらは若い方の株
柄の根元は大きく膨らんでいる。

これらの標本写真もピントをずらして撮影した3-5枚くらいの画像を深度合成している。
1枚の写真で全体にピントを合わせることは、レンズの絞りを最大に絞り込んでもなかなか難しいからだ。
これらの貴重な採集品は、DNAサンプルの採取や顕微鏡観察を行ったのち、乾燥標本として保存した。
ごく一部を食味検査に回したが・・。(^^;
胞子は類球形で、6.5×5.5μm程度。
新菌類図鑑の記載では「球形」となっているが、どう見てもこれは球形とは言いがたい・・。

ホンシメジは2種以上を含む複合種であることが確認されているので、本種は図鑑に記載された種とは別種なのかもわからない。
そして胞子は非アミロイド

ひだ断面は予想どおりのつまらない姿

そして、例によってフロキシンで染色してKOHでふやかして押しつぶした子実層の様子

ひだ実質の菌糸には特大のクランプが見られる。

傘表皮も、見た目の割りにつまらない様子だ。

コンゴーレッドで染色して、KOHでふやかし、さらに偏斜照明まで当ててみた。
傘表面は細い菌糸が平行に走っている。

小さなつぶつぶは付着した胞子。黒っぽいものは何かの微生物(菌類?)が付着(寄生?)したもののようだ。