2015年11月30日

検鏡の結果

遠州灘の海岸で採集してきたケシボウズとヒメツチグリ属の標本を検鏡してみたので、その結果を掲載しておく。

検鏡といっても胞子のみの観察である。
ケシボウズの胞子はけっこう小さいので、対物レンズはすべて100倍の油浸レンズを使用した。
また、標本写真は、ピントをずらして撮影した2-4枚程度の画像をPhotoshopで深度合成している。

先ずは、浜岡砂丘で採集した小型のケシボウズ
151126_162158_6D_IMG_2001.jpg

胞子は小さいイボに覆われていると予想していたが、意外にもアバタケシボウズタケのように大型のトゲに覆われているものが多かった。
151127_150238_X5_IMG_0615.jpg


次は、浜岡砂丘で採集したナガエノホコリタケらしきケシボウズ
151126_163055_6D_IMG_2009.jpg

胞子表面はトゲ状〜マスクメロンのような網目状になっており、ナガエノホコリタケとして間違いないようだ。
151127_165139_X5_IMG_0669.jpg


浜岡砂丘で採集したヒメツチグリ属でヒメカンムリツチグリのようだと思っていたものも、孔縁盤の形状などを確認すると、これもヒヨリヒメツチグリのようだ。
151126_162638_6D_IMG_2004.jpg

胞子は褐色で、不定形なイボ状突起に覆われている。
サイズは径4.2μm程度の球形で、ヒヨリヒメツチグリの新産種報告(坂本・糟谷 2008年 日菌報)の記載(5.5-7μm)よりもかなり小さいようだ。
151127_152829_X5_IMG_0632.jpg


次は典型的なアバタケシボウズタケと思われた中田島砂丘のケシボウズ
151126_164438_6D_IMG_2022.jpg

胞子は角錐状のやや長いトゲに覆われているが、比較的小さいトゲに覆われている胞子も混じっているように見える。
151127_150326_X5_IMG_0616.jpg


これは中田島砂丘で採集した小型のケシボウズを2つ並べている。
151126_165414_6D_IMG_2031.jpg

上側のものの胞子は、浜岡砂丘のものと同じようにアバタケシボウズタケの胞子とよく似た姿をしている。
151127_154814_X5_IMG_0640.jpg

下側のものはアバタケシボウズタケを小型にしたような姿をしているが、胞子は意外にも小型のトゲに覆われていた。
151127_162459_X5_IMG_0650.jpg


中田島砂丘で最後に採集した大型のアバタケシボウズタケらしきもの
頭部がかなり扁平なのが気になった種だ。
151126_165032_6D_IMG_2029.jpg

胞子を確認すると典型的なアバタケシボウズタケの姿をしていた。
151127_155745_X5_IMG_0643.jpg


中田島砂丘で採集してきたヒヨリヒメツチグリらしきものも念のため確認してみた。
151126_170123_6D_IMG_2039.jpg

こちらの方は胞子サイズが径5.0μm程度あり、浜岡砂丘のものよりやや大きいが、やはり前述の記載よりは少し小さいようだ。
151127_164331_X5_IMG_0662.jpg


posted by gajin at 23:24| Comment(0) | きのこ

2015年11月26日

1年ぶりの遠州灘

このところ雨がけっこう降っていたので遠州灘の海岸に行かねばと思っていたのだが、もうこんな時期になってしまった・・。

AM3:30にぱっちり目を覚まして出発し、浜岡砂丘に到着したのは6:30頃。
予想どおり雨はほとんど上がってしまっていて、時々降ってくる小雨にも傘をさすことはなかった。
夜明け頃までは風がけっこう強かったが、しばらくすると風力発電の風車が止まってしまうほど穏やかになり、気温も比較的高かった。
151126_071353_J5_DSC_1138.jpg
しかし、風力発電の風車はまた増えているような気がする・・。

最初に出迎えてくれたのはこの可愛らしいスナヤマチャワンタケだった。
151126_064612_TG4_PB260002.jpg

その近くでは小型のケシボウズが発生していた。
151126_065429_TG4_PB260005.jpg

別の場所ではアバタケシボウズタケ(Tulostoma adhaerens)と思われるものも見つかった。
最近雨が多いせいなのか外皮には藻類が発生してきている。
151126_065650_TG4_PB260006.jpg

同じような場所にヒメツチグリの仲間が転がっていた。
なぜか頭部には砂が多く付着していて特徴が分かりづらいが、雨水を吸って外皮が開いている様子はヒヨリヒメツチグリ(Geastrum kotlabae)のように見える。
151126_065722_TG4_PB260008.jpg

また違う場所ではナガエノホコリタケ(T. fimbriatum var. campestre)のような大型のケシボウズも見つかった。
まだかなり新しい孔口の様子はウネミケシボウズタケ(T. striatum)を彷彿とさせる。
151126_070550_TG4_PB260015.jpg

ヒメカンムリツチグリ(G. quadrifidum)のようなきのこも見つかった。
151126_072532_TG4_PB260022.jpg

浜岡砂丘の西側の一角はなぜかブルドーザーで平らに均されていた。
151126_082503_TG4_PB260028.jpg

クロマツ林内は予想外にきのこが少なく、やや古くなったショウロがあちこちで目立っていたくらいである。
151126_084025_TG4_PB260031.jpg

次の目的地である中田島砂丘に向かう途中に立ち寄った大須賀辺りの海岸は、環境も非常に良かったが、ケシボウズなどは見つからなかった。
151126_093648_TG4_PB260034.jpg

そのあと、福田の海岸にも立ち寄ってみたが、やはりまだケシボウズなどは発生してきていない様子だった。

中田島砂丘では、数年くらい前に作られた垣根が好い具合に古くなり、環境はなかなかが良くなってきていた。
151126_111110_TG4_PB260045.jpg

ここでもアバタケシボウズタケ(T. adhaerens)らしきケシボウズが発生してきていた。
151126_110220_TG4_PB260042.jpg

これはまだ発生から1か月も経っていないようだ。
151126_110238_TG4_PB260043.jpg

トベラなどの低木がまばらに生える一角には、ここでもヒメツチグリの仲間が風に飛ばされたように転がっていた。
151126_111536_TG4_PB260046.jpg

小型のケシボウズも何か所かに発生していた。
151126_112908_TG4_PB260050.jpg

水分を十分に吸ってきれいに開いたヒメツチグリの仲間
やはりこれはヒヨリヒメツチグリ(G. kotlabae)のように思える。
151126_113458_TG4_PB260054.jpg

最後に歩いた松林の際に大型のケシボウズが発生しているのが目に付いた。
これもアバタケシボウズタケ(T. adhaerens)のようだが、かなり大型で頭部の形状がかなり平べったいのが気にかかる。
151126_115855_TG4_PB260067.jpg

今日は帰宅してから標本撮影のみで手いっぱいだったので、検鏡は明日以降やることにしよう・・。


posted by gajin at 23:28| Comment(0) | きのこ

2015年11月16日

ササタケ?

今年、なかなか行くことが出来なかった志摩市の登茂山園地を歩いてきた。

穏やかな英虞湾の海では養殖のアオサがもうかなり育っているように見えた。
151116_113844_6D_IMG_1991.jpg

このところしっかりと雨が降ってくれたので、何某かのきのこが出ているのではないかと期待して歩いていくと、すぐにこのササタケらしききのこが出迎えてくれた。
151116_104936_TG4_PB160001.jpg

同じきのこの裏側
傘、ひだ、柄とも同じような黄色い色をしている。近くには老菌もいくつか見られたが、それはもっと褐色を帯びた色をしていた。
151116_104950_TG4_PB160002.jpg

近くにはショウロの仲間もいくつか発生していた。
151116_105121_TG4_PB160005.jpg

桜の枯れ木から出ていたのはたぶんミイロアミタケだろう。なかなかシックで美しい色をしている。
151116_105443_TG4_PB160006.jpg

同じような桜の切り株から出ていたこのきのこはもっと美しかった!
何というきのこか良く分からないが(調べる気力なし・・)、硬質菌も侮りがたいなと思う。
151116_105030_TG4_PB160003.jpg

シロシメジかな?と思ってよく見るとワカフサタケの仲間のようだった。
151116_105644_TG4_PB160007.jpg

そして、ついに見つけたマツタケのようなもの!
151116_112119_TG4_PB160012.jpg

抜いてみると非常に強靭な肉質で、わずかにマツタケの香りもする・・
しかし、冷静になってよく見ると、このひだのギザギザ具合はマツオウジに違いないだろう。
151116_112143_TG4_PB160013.jpg

コツチグリらしききのこの残骸はたくさん転がっていたのだが、なぜか新鮮なものはさっぱり見当たらなかった。
151116_112556_TG4_PB160014.jpg

若いアカマツの生えた切り通し斜面にアミタケがたくさん発生していた。
151116_114156_TG4_PB160016.jpg

そして、アミタケの近くには新鮮なオウギタケの姿も。
10月の乾燥で出られなかったきのこが今頃になって発生してきたようだ。
151116_121223_J5_DSC_1127.jpg

こちらはヌメリイグチのよう・・
151116_130205_TG4_PB160024.jpg


最初に見たササタケらしききのこを持ち帰って検鏡してみた。

胞子は表面がざらざらしており、サイズは平均で7.4×4.2μm程度。
151116_200729_X5_IMG_0605.jpg

ひだ断面に目立ったシスチジア等の組織は見当たらない。
151116_201353_X5_IMG_0608.jpg

例によってフロキシンで染色しKOHを加えて押しつぶした子実層の様子
担子器の基部にはクランプがある。
151116_202045_X5_IMG_0611.jpg

傘表皮の様子
151116_202657_X5_IMG_0612.jpg

検鏡の結果は、ササタケを否定するものは何もないが、かといってこれだけでササタケだと断定できるものでもないようだ・・。

posted by gajin at 23:19| Comment(0) | きのこ

2015年11月15日

白塚町の海岸

津市白塚町の海岸を1時間ほど散策してきた。

ここはかなり広大な面積の海浜植生が広がっているので、くまなく散策するのはなかなか大変だ。
151115_141411_J5_DSC_1106.jpg

カワラナデシコの後方に見える幾つかの建物は建設中の下水処理施設だ。
当初、県はこの施設を海浜側に作りたかったようだが、それはなんとか阻止されて堤防の内側に建設されることとなった。
151115_143510_J5_DSC_1118.jpg

この工事の影響を調査するためなのか、海浜植物(ビロードテンツキ?)の育成調査とやらを実施しているようだ。
151115_142035_J5_DSC_1108.jpg

これがその観測装置らしきもの。風向・風速や地温なんかを観測しているようだ。
この場所のビロードテンツキは、芝生を貼るときのような四角いパッチワークのように植えられているように見える。
151115_145241_J5_DSC_1124.jpg

1か所でアバタケシボウズタケらしきケシボウズが3個ほど出ていた。
この砂の付着具合からすると、発生してからまだ1か月も経っていないと思われる。
151115_142408_J5_DSC_1111.jpg

波打ち際には大型のカモメの仲間とカワウらしき鳥がたくさん集まっていた。
151115_143835_J5_DSC_1119.jpg

帰りに三重大学裏の堤防工事の進捗状況を確認しようと行ってみたが、車ではこの辺りまでしか近づけない。
工事が完了すれば堤防道路が今までより広くなるので、堤防に車を停めての海岸散策がしやすくなるだろうか?
151115_151146_J5_DSC_1126.jpg
※この写真の場所は、運動公園のような施設が海岸側に張り出している部分だ。


posted by gajin at 18:38| Comment(2) | きのこ

2015年11月10日

今ごろオオイチョウタケ!?

家の近くの林道を気晴らしにバイクで走ってみたら、道端に大型の白いきのこが出ているのが目に入った。
151110_145902_TG4_PB100010.jpg

最初、ベニタケの仲間のように思えたが、このような杉林だし・・
抜いてみると意外に新鮮で、オオイチョウタケに間違いないように見えた。
151110_150054_TG4_PB100013.jpg
しかし、オオイチョウタケといえば彼岸を過ぎたくらいの比較的暖かい時期に発生するきのこではなかったのか・・? 頭の中が??となる・・。

傘のかけらをポケットに入れて持ち帰り検鏡してみた。

ひだをカバーグラスの上に乗せると、短時間で多数の胞子が落下した。
これはドライで観察した画像
151110_154759_X5_IMG_0538.jpg

こちらは水封して偏斜照明を当ててみたもの。
サイズは平均で 6.3×4.1μm 程度
151110_155536_X5_IMG_0550.jpg

メルツアー試薬を加えるとアミロイド反応を示した。
151110_160006_X5_IMG_0552.jpg

ひだ断面には特に目立ったシスチジアなどの組織は無いようだ。
151110_161133_X5_IMG_0555.jpg

KOHでばらした子実層(フロキシンで染色)
151110_161846_X5_IMG_0559.jpg
ひだ実質の菌糸にはクランプがあり、担子器基部にもクランプがあるようだ。

傘表皮は細い菌糸が絡みながら平行に走っているようだが、最も外側の菌糸の状態はぼやけていて良く分からない。
151110_164051_X5_IMG_0565.jpg

コンゴーレッドで染色してKOHで潰してみると菌糸の状態は良く見えるようになった。
151110_164619_X5_IMG_0569.jpg

傘表皮の菌糸にも大型のクランプが確認できる。
151110_164756_X5_IMG_0572.jpg

以上の検鏡結果は全てこれがオオイチョウタケであることを指示している。

しかし、こんな時期にオオイチョウタケが発生するとは・・
今年はもう終わりと思っていたマツタケ山にももう一度行ってみなければなるまい。(←ウソ)


posted by gajin at 23:53| Comment(4) | きのこ