2016年12月21日

コレラタケの観察

12月18日、幼菌の会の例会(スライド会)があり、午前中の清水山の観察会でコレラタケらしききのこを見ることができた。

コレラタケは、遊歩道脇の決まった倒木に毎年たくさん発生していたとのことであったが、この日見つかったのはこの1本のみであった。
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標本撮影したやや大きめの画像
柄の上部には「つば」のなごりが見られる。
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時期的にヒメアジロガサの可能性もあるとのことだったので、確認のためひだの先端をつまんで縁シスチジアを確認してみた。(フロキシンで染色しKOHで押しつぶしている)
すると、独特の首の長い小頭形の縁シスチジアが確認できたので、やはりコレラタケで間違いなかったようだ。
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ひだ断面を見ると側シスチジアは無いようだった。
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先端部を拡大してみても、縁シスチジアは小さく埋もれているような感じでなかなか観察しづらい。
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胞子は、黄褐色で、フウセンタケ風のイボがあり、胞子盤が明瞭である。
サイズは、平均で8×5μm程度で、記載のサイズよりやや大きく太目であるが、変異と誤差の範囲かと思われる。サイズのばらつきはやや大きいようだ。
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傘表皮はウインナーソーセージのような菌糸が錯綜しており、画像右上に見られるような褐色の組織が表面に散らばっているようだ。
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柄シスチジアは確認できなかったが、表面にある菌糸束にはやや褐色を帯びた節のようなものが確認できた。
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実はこの発生木で、もう1本小型のきのこが採集されていたのだが、コレラタケとは別種のきのこだろうと思っていた。
しかし、念のため持ち帰った標本を検鏡してみたところ、上記の標本と全く同じ組織が確認でき、これも(比較的若い)コレラタケであることが分かった。
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良く見るとさらに小さい幼菌も発生してきている!

コレラタケについては、ネット上での画像等も少なく、正体が良く分からないきのこのひとつであったが、これでかなり理解することができた。
ドクツルタケなどと同じ毒成分を持つ致命的なきのこであるがゆえ、特に若い時の姿など頭に叩き込んでおいた方が良さそうだ・・。


posted by gajin at 10:43| Comment(3) | きのこ

2016年12月12日

畑の菌核菌

昨日から畑でジャガイモの収穫をしていたところ、ジャガイモの根元に小さな子嚢菌が幾つか出ているのに気が付いた。

地面にへばりつくように小さな茶碗が並んでいる。
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掘り出してみると意外にも菌核が付いていた。
春にモクレンの樹下に出る菌核菌 Ciborinia gracilipes なんかとちょっと似た感じだ。
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辺りを探してみると隣のネギの植わっている場所にも幾つか出ていたので、ジャガイモとは直接関係はないようだ。

子のう盤の径は3-6mm程度で、柄は3cmに及ぶ長さのものもあった。
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菌核内部は白い菌糸組織で満たされている。
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子のう盤の断面は4層ほどになっており、托外皮層(右側)は球形細胞が数珠状につながっているようにも見える。
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メルツアー試薬で染色した子のう盤断面
子のう先端と托外皮層にアミロイド反応が見られる。
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子実層を拡大した画像
ツバキキンカクチャワンタケなどと殆ど変わらない感じだ。
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KOHで少しばらした子実層の画像
微分干渉像のようにも見えるが、これは偏斜照明で撮影した画像を深度合成したものだ。
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一体これは何を宿主にしている菌核菌なのだろう?
明日はもう少し色々な場所を確認してみよう・・。


posted by gajin at 23:53| Comment(0) | きのこ

2016年09月27日

竹林はエントローマの楽園だった・・

昨日のことになるが、菌友のosoさんに教わったソライロタケの発生する竹林を訪ねてみた。

ソライロタケは、発生のピークはやや過ぎているようだったが、比較的良く手入れされた孟宗竹林の斜面などに数多く発生しているのを確認することができた。
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老成すると傘が反り返ることもあるようだが、こんなになるのは珍しい。
ひだの色が鮮やかだ。
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じっくり確認すると、一帯の竹林にはどこにでもソライロタケが出ているようで、短時間の間に100本近くも確認することができた。これを目にすると、この時期どこの竹林でもソライロタケが出ているのではないかと思ってしまうが、そんなことはないのだろう・・。
写真は、帰りの道路脇斜面に格好良く並んで発生していた一群。クモの巣に積もっている胞子の色はかなり赤味を帯びているのが分かる。撮影後、これを標本用に採集させていただいた。
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家に持ち帰ると、きれいな青色はかなりくすんでしまっていた。
これはひょっとすると照明光の加減なのかも分からない。
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キイボカサタケ、アカイボカサタケ、シロイボカサタケのいわゆるイボカサ三兄弟もたくさん発生していた。
これはキイボカサタケ
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そしてこれがアカイボカサタケ
先日、京都大学で開催された日本菌学会60周年記念大会でポスター発表された千葉科学大学の池側氏らの研究「キイボカサタケおよびその関連菌群の分類学的再検討」によれば、日本産のキイボカサタケとアカイボカサタケは分子系統的に差異が認められないということである。日本産の黄と赤は同種内の変異と考えねばならないようだ。
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シロイボカサタケは黄や赤とは別種として良いようだが、感覚的にはなんだか釈然としない気分だ・・。
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さらにダイダイイボカサタケ(青木仮称)と思われるものも見られた。
これも黄-赤イボカサタケの変異の範囲なのだろうか・・?
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竹林の近くでは久しぶりにコンイロイッポンシメジを見ることができた。
昔これを良く目にしたアカマツ−コナラ林とは環境があまりにも違っているし、紺色も少し薄く感じるがコンイロイッポンシメジには違いないようだ。
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遠目にキイボカサタケにしてはぼってりしすぎているなと思って近づいて行ったら、やっぱり違っていた。
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キイロウラベニタケとか仮称で呼ばれているエントローマだが、今年は特に各地で良く発生しているようだ。
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黄-赤-白の三色といえば、ナギナタタケの仲間もたくさん発生していた。
先ずはこれが黄色
ナギナタタケで良いのだろうか?
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そして赤色はベニナギナタタケなのか??
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白色は何だろう?
やや大型でシロソウメンタケではないと思われる。
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トガリワカクサタケと思われるきのこも見ることができた。
写真では分かりにくいが、柄はゼラチン状ぬるぬる物質をまとっており、柄を持って抜こうとしても指がすべってしまうのだ。
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オオゴムタケもたくさん発生していた。
オオゴムタケのイメージとして、なんとなく真っ黒なきのこという認識をしていたのだが、実は良く見ると真っ黒なのは発生している材の方で、オオゴムタケ自体は薄茶色のなかなかシックな色なのだ・・。
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しかし、この発生している材の感じといい、発生の様子といい、キリノミタケにとても良く似ているなと思う・・。


posted by gajin at 23:19| Comment(2) | きのこ

2016年07月17日

黒変するピンクのルスラ

7月16日(土)三重県民の森で開催されたきのこ観察会で発生が再確認された興味深いベニタケ属菌のメモ

この場所で最初に見つかったのは2008年7月5日で、こちらに観察記録を書いている。
恐らく未記載種であると思われるが、本郷次雄博士が1987年8月4日と1993年8月6日に大津市で採集された子実体の記録を残されている。また、2006年7月に開催された仙台合宿でも私自身が29日に太白山で採集しており、関西のみならず広範囲に分布しているのではないかと思われる。

10:46 見つかった直後はこのような状態だった。近隣の菌根性樹種はアラカシとモミ。
この時点で中央のきのこに潜んでいるナメクジを退治しておくべきだった・・。
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15:07 観察会終了後に行ってみると約4時間の間に傘が1個まるごと食べられてしまっていた。160716_150654_EM521671xs.jpg

柄が全体に特徴的なピンク色を帯び、傘表面はややビロード状で赤紫色の地に周辺部が黄緑色を帯びる。
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全ての部位がシロクロハツのような黒変性を持っている。
胞子紋は白色。ひだは柄に近い部分から分岐しているものが多い。
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ひだ断面を見ると、細長い縁及び側シスチジアが数多く見られる。
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ひだ断面を偏光照明で観察すると、なぜかシスチジアのみが光り輝いて見える。
これがこの種のみの特徴なのか、他の種にも広く見られる現象なのかは良く分からない。いちど色々な種で確認してみないといけないと思っている。
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側シスチジアは指状突起を持った細長い円筒状〜棍棒状。縁シスチジアもよく似た形状である。
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傘表皮は隔壁を持った毛のような菌糸が多数立ち上がっているようだ。
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乾燥系60倍対物レンズで観察した担子胞子(メルツアー試薬で染色)
細かいイボ状突起に覆われている。
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こちらの画像は油浸100倍対物レンズを使用し深度合成を行ったもの
胞子のサイズは8×6μm程度
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こちらは深度合成をしていない画像だが、くっきりした胞子盤の模様や比較的長い嘴状突起の様子が確認できる。
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posted by gajin at 23:11| Comment(2) | きのこ

2016年07月15日

とても忙しい日々

なんと1か月以上も更新をサボってしまった。
きのこが無かったからじゃなくて、あり過ぎて忙しかったから・・。
それになんか最近はTwitterの方でリアルタイムに情報発信するのにハマってしまって、ブログの方がおろそかになってしまっていたのだ。

この1か月間に目にしたきのこを幾つか掲載しておく。

これは昨日初めて目にすることができたフカミドリヤマタケまたはヒスイガサ(いずれも仮称)とされるきのこ
7月4日に探したときにはまだ何も見つからなかったのだが、昨日は幼菌から老菌まで揃っていた。
これはまだ若い子実体で、遠目には黒っぽく見えていた。
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(7月14日 三重県菰野町)

こちらは、すらっと柄が伸びた子実体
柄の色など芝生の緑とそっくりで見つけにくい。
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(7月14日 三重県菰野町)

きのこ仲間の裏庭のミョウガの中に生えたセミタケ
4本生えたという。
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(7月14日 三重県いなべ市大安町)

これまた、きのこ仲間の家のすぐ近くに発生したキヌガサタケ
早朝連絡をもらって駆けつけたら丁度良い具合に開いたところを見ることができた。
今年は6月中旬に数本発生したようで、もう出ないかと思っていたのだが、雨が多く降ったため遅れていたものが発生したのだろう。
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(7月14日 三重県いなべ市藤原町)

近所の神社のティラミステングタケ(仮称)
前日に発生したらしく、乾燥で傘がひび割れ、とても脆いひだは無くなっている。
マクツバコナカブリテングタケという仮称があるようだが、ティラミステングタケの方が広まりつつあるようだ。何より、ココアの粉をまぶしたような傘が、お菓子のティラミスそっくりだからだ。
本種は、シンガポールで採集された標本により記載された Amanita vestita と同種だと思われる。
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(7月12日 三重県松阪市)

7月9-10日は兵庫きのこグループの合宿に参加させていただいた。

探索地となった兵庫県但馬高原は標高500m〜600mほどで、イグチの仲間の発生は少なかったが、ベニタケやテングタケを中心に多くのきのこを見ることができた。
中でも一番きれいだったのがこのヒメベニテングタケ
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日和田高原などで見たものよりも赤味が強いように思われた。
(兵庫県美方郡香美町)

真正コテングタケモドキのつぼは、このようなくびれがあるらしい。
でも、これが真正のコテングタケモドキであるかどうかは?らしい・・。
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(兵庫県美方郡香美町)

7月1日〜4日はきのこ写真家の大作さんがこちらに来られていた。
和歌山に光るきのこやキヌガサタケを撮影に来られた帰りだったが、関東方面では見られないきのこを精力的に撮影されていた。
写真はミミブサタケを撮影されている大作さん。
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(7月3日 三重県松阪市)

アオゾメクロツブタケがマテバシイのほぼ純林と思われる場所に発生していた。
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(7月4日 三重県菰野町)

津市の公園ではタマアセタケがちょうど発生のピークだった。
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(7月4日 三重県津市)

ミミブサタケは三重県内では比較的珍しく、これが2例目となるようだ。
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(7月3日 三重県松阪市)

堀上げたところ
菌核は掘るときに少し欠けてしまったようだ。
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(7月3日 三重県松阪市)

チャタマゴタケを求めて伊勢神宮に行ってみたが見つからなかった。
代わりにハナビラタケが立派に発生していた。
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(7月2日 三重県伊勢市)

シロオニタケもきれいに発生しているところが見られた。
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(7月2日 三重県伊勢市)

6月25-26日は大阪市立自然史博物館で開催された菌類講座(旧腹菌類の分類と観察法)に参加させていただいた。
腹菌類とは関係ないが、会場隣の植物園の竹林で珍しいカヤバノクヌギタケが見つかった。通常はススキの根元に発生するらしく、竹林で見つかったのはこれが初めてということだ。
しかしこれ、とてもクヌギタケ属とは思えない姿をしている。
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(6月26日 大阪市東住吉区)

もちろん、腹菌類も珍しいものが採集された。
見つかったら良いなと期待されていたシロクモノコタケだ。主に関西方面の海岸などで見つかっている菌だが、内陸の芝生上でも採集例があるようだ。
やはり、これも植物園の芝生上で発生が確認された。
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(6月26日 大阪市東住吉区)

6月24日、津市の公園に行ってみると、以前から「うまそうなイグチ」と呼んでいるイグチの仲間がたくさん発生していた。
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(6月24日 三重県津市)

ムラサキヤマドリタケも少数だが発生していた。
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(6月24日 三重県津市)

アイタケもなかなかきれいな姿で発生していた。
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(6月24日 三重県津市)

最近の写真は、生態写真でも深度合成(ピントをずらして撮影した画像を合成して深いピントの写真を作成すること)を多用しているので、ピントがきりっとした写真が多くなったと思うのだがいかがだろうか?
まあ、必然的に三脚を使うことになるので、手振れが無くなることの効用の方が大きいのかも分からないが・・。

その他にも掲載したいきのこはたくさんあるのだが、これくらいにしておこう・・。


posted by gajin at 23:53| Comment(6) | きのこ